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肝臓疾患:iPS細胞を用いた研究

2014年7月、レジエンスは大阪大学および医薬基盤研究所とiPS細胞を用いた肝硬変治療の再生医療等製品の開発に関して共同研究の契約を締結しました。
2014年7月29日プレスリリース

肝硬変は慢性肝障害が進行しておこる疾患で、全国で40~50万人が罹患し、肝硬変が進行すると肝臓がんや肝不全になることがあります。その根治療法として肝臓移植が行われていますが、ドナー不足のため治療が受けられない患者が多数います。そのため画期的な治療法の開発が待たれており、特に京都大学の山中伸弥教授が開発したiPS細胞*1を用いた再生医療はその一端を担う治療法として注目を浴びています。
肝細胞移植を実現するためには大量の高機能な肝細胞が必要ですが、大阪大学大学院薬学研究科教授、医薬基盤研究所招へいプロジェクトリーダーの水口裕之先生は、iPS細胞から高機能な肝細胞への分化誘導技術や、ラミニン*2を用いたiPS細胞由来肝前駆細胞の維持・増幅の技術開発に成功しました。
レジエンスは水口先生が開発した肝細胞の大量供給、ひいては肝細胞移植を可能にする基盤技術を基に、肝硬変治療に対する共同研究を実施しております。はじめに、iPS細胞由来肝前駆細胞を肝疾患モデル動物に移植する細胞移植試験を行います。

レジエンスは本共同研究を通じた肝疾患における再生医療等製品の開発を、早期の企業治験を目標としております。

  • *1:iPS細胞とは人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell)のことで、体細胞からいくつかの因子を用いてリプログラミングされた幹細胞です。
  • *2:ラミニンとは細胞外マトリックスの基底膜を構成する巨大なタンパク質です。

参考論文

Long-Term Self-Renewal of Human ES / iPS-Derived Hepatoblast-like Cells on Human Laminin 111-Coated Dishes
Kazuo Takayama, Yasuhito Nagamoto, Natsumi Mimura, Katsuhisa Tashiro, Fuminori Sakurai, Masashi Tachibana, Takao Hayakawa, Kenji Kawabata, Hiroyuki Mizuguchi
Stem Cell Reports. 2013 15; 1(4): 322–335.

肝臓疾患の再生治療

慶應義塾大学

2015年4月、レジエンスは慶應義塾大学とブタを用いた肝疾患に対する再生医療等製品の開発に関して共同研究の契約を締結しました。

2015年4月9日プレスリリース

近年、ES細胞やiPS細胞から試験管内で肝オルガノイドを作る研究が小動物レベルで加速しています。肝硬変患者や肝臓代謝異常の患児に移植しようとする試みが世界中で試みられています。しかし、臨床応用には、体サイズを考えた大型動物での検証が必須です。また肝臓疾患を対象とした再生医療等製品の製品化には下記のような課題があると考えられています。

  1. 試験管内では誘導した肝細胞は極めて未熟である。
  2. 単離肝細胞の門脈内移植では、極めて少数の移植細胞しか定着しない。
  3. スフェロイド化することで移植細胞の高機能化を図れば、塞栓のリスクが高まり臨床では危険である。
  4. 肝オルガノイドを肝組織として発育させるには「塊」として生体に移植する必要がある。

本共同研究の研究代表である慶應義塾大学医学部ブリジストン臓器再生医学寄附講座 小林英司特任教授は、「ヒト臓器を作る(Organ fabrication)研究」を臨床応用するべく多方面から研究を続けてきました。特に臨床応用を前提に体サイズがヒトに近いブタモデルで研究を進めています。ブタは生理学的、解剖学的にみてヒトとの類似性が高く、近年小型化され扱いやすくなってきている事からも臨床を意識した実験モデル動物として最適です。本共同研究では、ヒト肝臓組織または肝臓そのものをブタにおいて産生させ、ヒトへの移植が可能かどうかについて術式を含めて科学的に検討します(図1)。

既に世界中の多くの研究機関で肝細胞移植の検討が行われていますが、それらに共通した課題は移植細胞・組織の長期生着が見込めないことにあります(図2)。上述のように、生理学的、解剖学的にヒトと類似性が高いブタを用いることで、ヒトへの外挿性が極めて高い移植方法の検討を行うことが可能であると考えています。小林教授が開発を進める肝臓再生治療法には、ブタの体内で丸ごとの肝臓を作る手法、肝臓の芽を移植する方法、さらに脱細胞した肝臓に再度必要なヒト肝細胞を充填して作り上げる方法などがあり、多方面から開発を進めています。

レジエンスは本共同研究を通じて肝疾患における再生医療等製品の開発を行います。最も臨床応用が近い対象疾患としては、新生児先天性代謝異常症へ適用可能な肝臓組織を製造することを目指します。対象疾患が生じる肝性脳症は、体内で産生される毒素や老廃物が肝機能障害により除去されず、血液中にたまって脳に到達し、脳機能が低下する病気で、重症の場合は神経学的後遺症や精神発達遅延などが認められます。新生児先天性代謝異常症においては診断後すぐに肝臓組織を移植することで移植可能な年齢までの間、肝性脳症を防ぐことが可能です。

また将来的に肝臓そのものをブタにおいて製造する方法や脱細胞化グラフトを用いて試験管内で細胞充填して肝臓を作製する方法が確立できれば、肝疾患全般における慢性的なドナー不足を完全に解決することができると考えております。

図1
図1 ブタを用いた肝臓作製

図2
図2 肝臓再生における課題と克服手法

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